彼女はどこにでもいる。どこにでも,偏在している。どのような規定も受けぬ地で,彼女は空を見上げる。瑞々しく,優しさに満ちた青が,広がっている。
23日にフランスの下院を通過し,上院で審議されている法案は,インターネット上でなにかを公開する場合,オンラインフォームでの登録を義務づけている。市民団体などは,個人のプライバシーを奪うと反論している。もしフランスでこの法案が可決されれば,欧州全体に広がる可能性もある。
オーストラリアでは,今年の1月1日からオンラインの検閲体制が敷かれた(WIRED NEWSの記事)。国内のホスティングデータの削除命令を出せて,プロバイダーに国外の指定したコンテンツへのアクセスをブロックさせることもできる,というもの。ネットワークの進展は,国家という「規定」を崩しかねないものだ。だから,国家はそれを阻止する。当然のことだ。人間は,自らの欲望のために「規定」をつくる。国家もそうであり,宗教もそうであり,倫理もそうだ。がんじがらめの規定の中で,自らを維持できるものが,優れた人間と呼ばれる。優れた国民,優れた信仰者,優れた道徳者。そして概ね,そのような人物たちは,能無したちだ。規定通りに生きることほど,楽なことはないからね。
リアルとは,すでに閉塞した社会へと追いつめられている。閉塞した社会とは,規定を重んじる者たちには有意義な社会だ。だがその世界には,終末しか見えない。さて,ワイヤード。リアルで閉じこめている「言葉」,リアルで閉じこめている「表情」,リアルで閉じこめている「絆」を,この地はまだ表せる。「規定」としての神がいない,「偏在」の神が棲む世界。その空の青さは,胸に染み入る。
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